こんにちは。毎月200本以上の腕時計をマッチングしているCHRONOBLE 運営者の「NAOYA」です。
クオーツ時計(電池式時計)って、「電池交換さえしていればOK」と思っていませんか? 私も昔はそう思っていたんですが、実はそうとも限らないみたいです。
「オーバーホール クオーツ」と検索している方は、もしかすると「クオーツのオーバーホールは不要と聞いていたのに、本当に必要なの?」とか、「電池交換しても動かないんだけど…どうしよう」あるいは「もし修理するなら料金はいくらかかる?」といった、具体的な疑問や不安を抱えているかもしれませんね。
確かに、機械式時計に比べてクオーツ時計のメンテナンス情報って少ないですよね。放置した結果、時計の寿命がどうなるのか、修理に出す最適な頻度はいつなのか、判断基準が分かりにくいと思います。
この記事では、そうしたクオーツ時計のオーバーホールに関するさまざまな疑問について、修理の選択肢として知っておきたい「ムーブメント交換」の話も含めて、ポイントを整理して詳しく解説していきますね。
- クオーツ時計にオーバーホールが必要な本当の理由
- 「電池交換しても動かない」トラブルの主な原因
- メーカー正規と修理専門店の料金相場の違い
- 修理を安く抑える「ムーブメント交換」という選択肢
- クオーツ時計にオーバーホールが必要な理由
- 「電池交換しても動かない」トラブルの主な原因
- メーカー正規と修理専門店の料金相場の違い
- 修理を安く抑える「ムーブメント交換」という選択肢
オーバーホール、クオーツ時計の必要性

まず一番の疑問、「クオーツ時計にオーバーホールは本当に必要なのか?」という点から見ていきましょう。
機械式時計と違って、クオーツは電子部品が多いので「不要」と思われがちですが、実はそうでもないんです。時計のオーバーホールの必要性は、クオーツ時計の「ある部分」にも当てはまるんですね。
このセクションでは、その理由と、放置した場合のリスクについて深掘りします。
クオーツのオーバーホールは不要?

いきなり結論から言ってしまうと、「針(アナログ)で時刻を示すクオーツ時計には、オーバーホールが必要」というのが答えになるかなと思います。
「え、電池で動くのに、なぜ分解掃除が?」と思いますよね。その理由は、クオーツ時計の構造にあります。
クオーツ時計は、大まかに言うと「電子回路」が正確な信号を出し、それを受けて「機械的な歯車(輪列)」が針を動かす、というハイブリッドな構造をしています。
問題となるのは、後者の「機械的な歯車」の部分です。この歯車がある限り、機械式時計とまったく同じように、部品同士の摩擦を減らしてスムーズに動かすための「潤滑油(オイル)」が使われています。
この潤滑油は、残念ながら永久ものではなく、時間とともに劣化したり、乾いたり、空気中のホコリを吸って汚れたりします。そうなると、歯車の動きがだんだん重くなってしまうんですね。
デジタル表示のみの時計は例外
ただし、歯車のような物理的な駆動部品を持たず、液晶画面などで時刻を表示する「フルデジタル時計」については、構造が根本的に異なります。
そのため、ここで言うオーバーホール(分解掃除)は原則として不要とされています。
クオーツ特有の「弱い力」が仇になる
ここで重要になるのが、クオーツ時計の「力」です。
機械式時計は、強いゼンマイの力で歯車をガッチリと動かしています。そのため、多少の油汚れや劣化があっても、力ずくで動き続けてしまうことがあるんです(その結果、抵抗が増えた部分の部品が削れて摩耗してしまいます)。
一方、クオーツ時計は、電池を長持ちさせるために、非常に「弱い力(低トルク)」でモーターを動かし、針を動かすように設計されています。
この「弱い力」こそが、メンテナンスを必要とする理由です。油の劣化によるわずかな抵抗の増加にも耐えられず、部品が摩耗するずっと前に、動作が停止してしまうんです。
ですから、クオーツのオーバーホールは、「部品の摩耗を防ぐ」という目的(機械式に近い)もありますが、それ以上に「油の劣化による動作停止を防ぐ」という目的が非常に強いんですね。
クオーツの寿命を縮める放置リスク

「じゃあ、止まるまで電池交換だけでいいや」と放置してしまうと、実はかなり深刻な、取り返しのつかない事態を招くリスクがあります。主なリスクは2つです。
リスク1:電池の液漏れ(最悪のシナリオ)
これが一番怖いです。時計が止まった(電池が切れた)状態で長期間そのままにしておくと、古い電池が内部で「漏液」を起こすことがあります。
この漏れ出たアルカリ性の液体が、時計の心臓部である「電子回路」の基板に触れると、回路パターンを腐食させて致命的なダメージを与えてしまいます。
こうなると、単なるオーバーホール(分解掃除)では絶対に直らず、電子回路そのものを交換する必要があります。
でも、古いモデルや限定モデルだと、メーカーにも交換用の回路がすでに「廃盤」になっているケースも少なくありません。その場合、残念ながら「修理不可能」となってしまうんです…。
リスク2:防水パッキンの劣化
もう一つの静かなリスクが、「防水パッキンの劣化」です。時計の防水性能は、裏蓋やリューズ部分に入っているゴム製の「パッキン」によって保たれています。
このパッキンは消耗品で、時間とともに弾力を失い、硬くなったり縮んだりします。これが防水性能の低下に直結するんです。
コストを抑えた「電池交換だけ」のサービスだと、コストと時間がかかる「防水パッキンの交換」や「防水テスト」を省略することが非常に多いんです。
一般的なパッキンの寿命はだいたい2~3年と言われており、これは奇しくも多くのクオーツ時計の電池交換サイクルとほぼ同じです。
パッキンが劣化したまま「防水時計だから大丈夫」と誤解して使っていると、日常の手洗いや突然の雨、夏場の汗や湿気で、時計内部にじわじわと水分が侵入します。その結果、内部のサビや文字盤のシミ、カレンダーの不具合などを引き起こします。
数千円の電池交換費用を節約したつもりが、将来的に何万円、何十万円もの高額修理につながる可能性があるのは、本当に怖いところです。
電池交換しても動かない原因とは

クオーツ時計のオーナーがオーバーホールを意識する最大のきっかけであり、最もショックな瞬間が、この「電池交換したのに動かない」という症状だと思います。
時計屋さんで新しい電池に入れ替えてもらったのに、秒針がピクリともしない…。考えただけでも不安になりますよね。
これには、主に3つの原因が考えられます。
原因1:電池の液漏れ(最悪のケース)
これが、長期間放置した場合の最も深刻なケースです。時計が止まった(電池が切れた)状態のまま何年も放置してしまうと、古い電池の内部からアルカリ性の液体が漏れ出す「漏液」という現象が起きることがあります。
この漏れ出た液体が、時計の心臓部である「電子回路」の基板に触れると、基板の上の細い配線パターンを物理的に腐食させ、溶かしてしまったり、断線させたりします。
こうなると、新しい電池(エネルギー源)を入れても、それを伝える道(回路)が壊れてしまっているため、モーターに電気が届かず、時計はうんともすんとも言わなくなります。
原因2:電子回路の廃盤
原因1の液漏れのほか、落下などの強い衝撃や、防水パッキンの劣化による湿気の侵入、あるいは単純な経年劣化によって電子回路が故障することもあります。この場合も、もちろん電子回路の交換が必要になります。
しかし、ここで問題になるのが「部品の保有期間」です。メーカーは修理用部品を永久に保管しているわけではなく、モデルの生産終了から一定期間(一般的に7~10年程度)が過ぎると、部品の製造も終了(廃盤)してしまいます。
特にヴィンテージウォッチや限定モデルの場合、交換したくても交換するための電子回路が、すでにこの世に存在しないという「修理不可」の状態に陥ってしまうケースです。
管理人こればかりは、技術者がどれだけ頑張っても、どうしようもない場合もありますね…
原因3:歯車・油の固着(修理可能なケース)
これは、メンテナンスで回復する可能性が非常に高い、希望が持てるケースです。先ほども触れた通り、クオーツ時計も歯車(輪列)を動かすために潤滑油が使われています。
長年メンテナンスをしていないと、その油が乾いてカラカラになったり、空気中の微細なホコリと混じって粘土のようにネバネバになったりします。こうなると、歯車が動くための抵抗が非常に大きくなります。
クオーツ時計は、もともと省電力で動くようモーターの力が弱く設計されているため、この抵抗の増加にモーターの力が負けてしまい、物理的に動けなくなっている状態です。
この場合は、オーバーホール(分解・洗浄・注油)が非常に有効です。ムーブメントを部品単位まで完全に分解し、専用の洗浄機で古い油や汚れを徹底的に除去し、クリーンになった部品を組み上げながら、軸受などに新しい適切な油を微量に注油します。
これにより、歯車は新品に近いスムーズな動きを取り戻し、モーターの弱い力でもしっかり針を動かせるようになり、再び元気に時を刻み始めます。
電池の持ちが悪いのは故障サイン

「あれ? この時計、半年前にも電池交換したばかりなのにもう止まった…」といった症状も、オーバーホールが必要な典型的なサインです。
これは、先ほど説明した「潤滑油の劣化」や「汚れ」によって、歯車を動かすための抵抗(負荷)が非常に大きくなっている証拠です。
管理人車で言えば、ずっとサイドブレーキを引きずりながら走っているようなもので、燃費(電費)が極端に悪化している状態ですね。
モーターが通常以上の電力を使って無理やり針を動かしているため、電池の消耗が異常に早まってしまうんです。これを放置しても、いずれは止まってしまいます。
他にも、「時間が大きく遅れる・進む」といった症状も注意が必要です。これは歯車の不具合だけでなく、電子回路(水晶振動子)の劣化や、あるいは「磁気帯び」の可能性もあります。
もし磁気帯びが疑われる場合は、時計の磁気帯びを自分でチェック・除去する方法もありますが、内部の不具合と切り分けるためにも、一度プロに点検してもらうのが安心ですね。
クオーツのオーバーホール頻度

じゃあ、一体どれくらいの頻度でオーバーホールに出せば良いのか、気になりますよね。
理想的な周期は「5~6年に一度」が目安とされています。
(ちなみに、一般的な機械式時計は3~4年に一度、オメガのコーアクシャルムーブメント搭載機などは8年~10年に一度が目安とされているので、クオーツはその中間くらい、というイメージでしょうか)
とはいえ、5~6年という周期をきっちり覚えておくのも大変なので、もっと現実的なタイミングとしては「電池交換2~3回に1回」と覚えておくと良いかもしれません。
管理人これは、先ほど触れた防水パッキンの寿命(2~3年)ともちょうどサイクルが合致します。
電池交換のタイミングで「今回はパッキン交換と防水テストもお願いします」と依頼し、その2~3回に1回は「オーバーホールもお願いします」と依頼するのが、非常に合理的で忘れにくいかなと思います。
もちろん、先ほどのような「電池の持ちが悪い」「動かない」「時間がズレる」といった不具合サインが出たら、上記の周期に関わらず、すぐに点検・修理を依頼してくださいね。
クオーツはムーブメント交換も選択肢

さて、クオーツ時計の修理には、高額なオーバーホール(分解掃除)以外にもう一つ、非常に合理的で知っておくべき選択肢があります。それが「ムーブメント交換」です。
これは、時計の機械部分(ムーブメント)を、修理するのではなく丸ごと新品に交換してしまう方法です。
ムーブメント交換が適している時計は、この方法が適しているのは、主に低価格帯のファッションウォッチや、汎用ムーブメントを搭載した時計です。
多くのファッションウォッチには、ミヨタ(シチズン系)やSII(セイコーインスツル系)などが製造する、安価で信頼性の高い「汎用ムーブメント」が使われています。
これらのムーブメントは、一つ一つの部品を分解掃除するオーバーホールの手間(技術料)よりも、ムーブメント自体の価格のほうが安いことが多々あります。
そのため、中身を丸ごと新品に交換してしまった方が「より安く、より早く、より確実に」修理できるケースが多いんです。料金もオーバーホールよりずっと安価(数千円~1万5千円程度)で済むことが多いですね。
こちらは、オーバーホール(分解掃除)で修理するのが基本となります。自分の時計がどちらに適しているか、まずは修理店で相談して見積もりをもらうのが一番確実ですね。
オーバーホール、クオーツの料金相場

ここからは、読者の皆さんが最も気になるであろう「料金」について、具体的に見ていきましょう。
クオーツ時計のオーバーホール料金は、機械式よりは安い傾向にありますが、どこに依頼するか(メーカーか専門店か)、そして時計の機能(シンプルか複雑か)で大きく変わってきます。
クオーツのオーバーホール料金はいくら

料金は、大きく分けて「メーカー正規サービス」か「民間の時計修理専門店」かで異なります。それぞれの特徴と相場観はこんな感じです。
メーカー(正規サービス)
| 料金相場 | 約40,000円 ~ 十数万円程度 |
| 特徴 | メーカー正規の修理は、「コンプリートサービス」といったパッケージ名で提供されることが多いです。 ①ムーブメントの分解掃除 ②外装の研磨(ライトポリッシュ) ③防水テスト ④純正部品(パッキン等)の交換 が全て含まれているのが一般的です。 |
料金は高額になりがちですが、そのブランドの基準で完璧にメンテナンスされ、外装まできれいになって戻ってくるという絶対的な安心感が魅力ですね。
民間(時計修理専門店)
| 料金相場 | 約20,000円 ~ |
| 特徴 | こちらは、基本的に「オーバーホール(分解掃除)」という作業そのものに焦点を当てた価格設定(例:クオーツ3針 22,000円)となっている場合が多いです。外装の研磨などは別途オプション料金となることが一般的です。 |
メーカー正規と比べると、基本料金はかなり安価に設定されています。技術力の高い優良な専門店を選べば、コストパフォーマンス高くメンテナンスが可能です。
部品交換代は「別途」が基本です。上記の料金は、あくまで「オーバーホールの基本料金」であることに注意してください。
メンテナンスの過程で、もし電池の液漏れによる「電子回路の交換」や「コイルの交換」、あるいは「歯車の交換」といった追加の部品交換が必要と診断された場合は、基本料金に加えて別途部品代が加算されます。
最終的な金額は、必ず修理に出す前の「見積もり」でしっかり確認してください。
主要ブランドのオーバーホール相場

料金は、時計の機能(シンプルな3針か、クロノグラフか)によっても大きく変動します。
特に、クロノグラフ(ストップウォッチ機能付き)は、部品点数が飛躍的に増え、構造が複雑になるため、通常の3針モデルよりも修理料金は高額になります。
以下に、主要ブランドやモデルクラス別の料金相場目安をまとめてみますね。あくまで参考程度にご覧ください。
| ブランド・モデル (機能) | 依頼先 | 料金目安 (税込) |
|---|---|---|
| オメガ (3針クオーツ) | メーカー正規 | 86,900円~ |
| オメガ (3針クオーツ) | 修理専門店 | 22,000円~ |
| タグ・ホイヤー (3針クオーツ) | 修理専門店 | 22,000円~ |
| タグ・ホイヤー (クロノグラフ クオーツ) | 修理専門店 | 33,000円~ |
| グランドセイコー (クオーツ全般) | メーカー正規 | 52,800円~ |
| グランドセイコー (クオーツ全般) | 修理専門店 | 36,000円~ |
| カルティエ (3針クオーツ) | 修理専門店 | 22,000円~ |
| 国産ブランド (3針クオーツ) | 修理専門店 | 15,000円~ |
(※注記: 上記はあくまで目安の基本料金です。記事執筆時点(2025年頃)の情報を元にしており、ブランドによる価格改定などで実際の料金とは異なる場合があります。必ず依頼先に正確な見積もりをご確認ください。)
オメガのクオーツ修理料金

オメガのクオーツモデル、例えば人気の「シーマスター」や「コンステレーション」などですね。
メーカー正規サービスだと、クオーツ(3針)のコンプリートメンテナンスサービスは86,900円~となっています(出典:オメガ公式サイト「サービス料金」 ※記事執筆時点)。これには外装研磨なども含まれていますが、なかなかの金額ですよね。
一方、民間の修理専門店であれば、22,000円あたりから受け付けているところが多いようです。メーカーの安心感とトータルケア(外装研磨含む)を取るか、コストを重視して分解掃除中心のメンテナンスを専門店に依頼するか、悩ましいところかもしれません。
タグホイヤーのクオーツ修理料金

タグホイヤーも、スポーティーな「カレラ」や「フォーミュラ1」、ダイバーズの「アクアレーサー」などでクオーツモデルが非常に人気ですよね。精度が高く実用的なので、所有されている方も多いと思います。
タグホイヤーのクオーツ修理料金も、やはりどこに依頼するか(メーカー正規か、修理専門店か)で大きく変わってきます。
民間の時計修理専門店の場合
まず、コストを抑えやすい民間の修理専門店の場合ですが、シンプルな3針モデル(日付表示あり/なし)で22,000円~、クロノグラフ(ストップウォッチ機能付き)になると33,000円~あたりが一般的な相場のようです。
やはりクロノグラフは、内部の部品点数が格段に増え、構造が複雑になるため、分解・組立・調整の手間賃として1万円以上の追加料金がかかるのが普通ですね。
これは、オーバーホール(分解掃除)そのものにかかる技術料が中心の価格設定かなと思います。
メーカー正規サービス(LVMH)の場合
一方で、メーカー正規(LVMH ウォッチ・ジュエリー ジャパン)に依頼する場合です。タグホイヤーでは「コンプリートサービス」という形でオーバーホールが提供されています。
メーカー公式サイト上では、モデルごとの詳細な価格表は提示されておらず、個別の見積もり対応が基本となっているようです。ただ、一般的にメーカー正規の料金は、民間の修理専門店と比べて高額になる傾向があります。
目安として、民間の基本料金の1.5倍~2倍以上、例えばシンプルなクオーツモデルでも5万円~、クロノグラフや特殊モデルは7万円~10万円以上になることも十分に予想されます。
予算に応じて、分解掃除(オーバーホール)だけを専門店に依頼してコストを抑えるか、外装研磨も含めたトータルケアをメーカー正規に依頼するか、時計の状態やご自身の希望に合わせて検討するのが良さそうですね。
グランドセイコーのクオーツ修理料金

グランドセイコー(GS)は、「9Fクオーツ」という世界最高峰とも言われる非常に高性能な専用ムーブメントを使っているのが特徴です。
メーカー正規の「コンプリートサービス」(オーバーホール+外装研磨)は52,800円~となっています(出典:グランドセイコー公式サイト「修理料金」)。
GSの場合、この特殊なムーブメントの取り扱いや、ザラツ研磨など特殊な外装仕上げが施されていることもあり、民間の修理専門店でも少し高めで、36,000円~といった価格設定が見られます。
GSはその高い技術力と美しい仕上げが魅力なので、グランドセイコーの価値や維持費を考えると、メーカーでの手厚いメンテナンスを選ぶ方も多いかもしれませんね。
DIY修理のリスクと注意点

「電池交換くらいなら自分で安く済ませたい」と考える方もいるかと思います。確かに費用は数百円~千円程度に抑えられますが、クオーツ時計のDIY修理、特に裏蓋を開ける行為は、節約できる金額とは比較にならないほど高いリスクを伴います。
私も以前、安価な時計で試したことがありますが、時計のDIY電池交換には相応のリスクがあると痛感しました。専門知識なしで行うのは正直おすすめできません。
DIY修理のリスクを3つまとめましたので、確認しておいてください。
防水性能の致命的な喪失
最大の危険がこれです。裏蓋を開けた時点で、防水パッキンがズレたり、目に見えない小さなホコリを噛んだりする可能性が非常に高いです。
また、パッキンには防水性を高めるシリコングリスを均一に塗布する必要がありますが、これも素人には困難です。専用の機器での「防水検査」なしに蓋を閉めると、
防水性能はほぼゼロになると思った方がよく、湿気や汗が内部に侵入して一気に錆びてしまいます。
静電気による電子回路の破壊
クオーツ時計特有の最大のリスクです。
電子回路は非常にデリケートで、人間の指先や金属工具から発生するわずかな静電気(ESD)が触れただけで、回路がショートして一瞬で破壊され、動かなくなることがあります。
プロは静電気対策を施した環境で作業します。
工具による外装の損傷
特に防水性が高い時計(ダイバーズウォッチなど)のスクリューバック式裏蓋は、固く締められています。
ネットで売っている安価な工具で無理に開けようとすると、工具が滑って裏蓋やケース本体に深い傷(通称「ガリ傷」)をつけてしまうことも…。
そうなると、精神的なショックも大きいです。
結論として、特に高級時計や防水モデル(ダイバーズウォッチなど)のDIYは絶対に避けるべきです。信頼できるプロに任せる費用は、時計の価値を守るための「技術料・保険料」だと考えるのが、結果的に時計を長く愛用する秘訣かなと思います。
オーバーホール、クオーツの総まとめ

最後に、この記事の要点をもう一度まとめてみますね。「オーバーホール クオーツ」と調べていた方の疑問が、少しでも解消できれば幸いです。
まず、「電池交換さえしていればOK」というのは誤解で、針を動かす歯車(機械部分)がある限り、クオーツ時計にも「5~6年に一度」の定期的なオーバーホール(分解掃除・注油)は必要です。
特に「電池交換しても動かない」という最悪の事態は、主に長期間放置されたことによる「電池の液漏れ(回路腐食)」と、定期的なメンテナンスを怠ったことによる「潤滑油の劣化(歯車の固着)」によって引き起こされます。
これを防ぐための鍵は、2つあります。
- 「5~6年に一度」(または電池交換2~3回に1回)の定期的なオーバーホール。
- 電池交換の際の「確実な防水パッキン交換」と「防水テスト」。
修理の賢い選択
- ファッションウォッチ・汎用機: 高額なOHより、安価な「ムーブメント交換」が合理的。
- 高級ブランド時計・専用機: 資産価値維持のためにも「オーバーホール」が必須。
DIYでの安易な修理は、静電気による回路破壊や防水性の喪失といった、より高額な修理につながるリスクが非常に高く、推奨されません。
大切なクオーツ時計の正確な時と輝きを未来にわたって守るために、信頼できるメーカーの正規サービスか、技術力の高い優良な民間修理専門店に、定期的なメンテナンスを依頼すること。それが、一番確実で、結果的にコストパフォーマンスも高い「投資」になるんじゃないかなと私は思います。
(※本記事に記載されている料金やサービス内容、修理の目安期間は、あくまで一般的な目安です。情報は記事執筆時点(2025年頃)のものであり、変更される可能性があります。正確な情報や最終的な判断については、必ず各時計メーカーの公式サイト、または専門の修理店にご相談ください。)

