こんにちは。毎月200本以上の腕時計をマッチングしているCHRONOBLE 運営者の「NAOYA」です。
大切な腕時計、「まだ元気に動いているから大丈夫」と思っていませんか?時計は非常に精密な機械ですが、同時にとてもタフなので、内部で問題が起きていても表面上は元気に動き続けてしまうことがあるんです。
でも、心のどこかで、時計をオーバーホールしないとどうなるんだろう?と、ふとした瞬間に不安がよぎる方も多いかと思います。
この記事では、時計のオーバーホールをしないとどうなるのか、駆動式ごとの頻度や料金の相場、依頼先の選び方まで、必要な情報をわかりやすく解説します。
- オーバーホールをしないと時計内部で具体的に何が起こるのか
- 放置期間が長引く(5年、10年、20年)ごとの深刻な症状とリスク
- 見落としがちな機械式とクォーツ式で異なるメンテナンスの重要な注意点
- 「予防」と「修理」のトータルコスト比較と、賢い依頼先の選び方
- オーバーホールをしないと時計内部で具体的に何が起こるのか
- 放置期間が長引く(5年、10年、20年)ごとの深刻な症状とリスク
- 見落としがちな機械式とクォーツ式で異なるメンテナンスの重要な注意点
- 「予防」と「修理」のトータルコスト比較と、賢い依頼先の選び方
この記事を読み終える頃には、あなたの時計にとって今何がベストな選択なのか、クリアになっているでしょう。
時計のオーバーホールしないとどうなる?内部で起こる末路

「まだ動いているから大丈夫」という油断が、実は一番怖いんです。なぜなら、時計の故障は突然死ではなく緩やかな病気の進行に近いからです。
私たちが気づかない時計の内部では、推奨メンテナンス期間を過ぎた瞬間から、静かに、しかし確実に問題が進行しています。
ここでは、オーバーホールを怠った時計がたどる、具体的な末路について詳しく見ていきましょう。
オーバーホールしないとどうなる?破滅への4段階

時計の故障は、ある日突然起こるように見えて、実は内部で段階的に進んでいます。多くの場合、放置された時計はこの4つのステージをたどり、最終的に深刻なダメージを負ってしまうんです。
ステージ1:初期(推奨期間超過 / 3〜5年)
推奨されるオーバーホール期間(一般的に3~5年)を過ぎたあたりです。この段階では、外見上の変化はまったくありませんし、時間のズレもほとんど体感できません。
管理人「まだまだ快調だ」と思ってしまう、最も油断しやすい時期ですね。
しかし、内部では潤滑油の劣化が静かに始まっています。時計に使われる油は、時間とともに酸化したり、わずかに蒸発したりして、その性能が落ちてきます。
これが、全てのトラブルの始まりです。時計にとっては「そろそろ健康診断が必要ですよ」という最初のサインが出始めた時期と言えます。
ステージ2:中期(5~7年)
劣化した油が乾き始め、潤滑性能が明らかに低下します。その結果、本来は油の膜で守られているはずの、金属部品同士が直接こすれ合う箇所が出始めます。これが摩擦抵抗の増大です。
この段階になると、表面的な症状が出始めます。
機械式時計の場合
摩擦抵抗が大きくなることで、時計の心臓部(テンプ)の動きが不安定になり、時間がズレやすくなります。また、「カチカチ」という動作音が以前より大きくなったり、ゼンマイを最大まで巻いても持続時間(パワーリザーブ)が短くなったりします。
クォーツ式時計の場合
摩擦抵抗が増えた歯車を、モーターがより強い力で無理やり動かそうとします。その結果、電池の消費が激しくなります。「いつもは2年持つのに、1年で電池が切れた」といった症状は、電池の不良ではなく、内部のSOSサインである可能性が高いですね。
ステージ3:後期(7~10年)
このステージに入ると、事態は一気に深刻になります。金属同士のこすれ合い(ステージ2)が続いた結果、部品が物理的に摩耗し、削れた金属粉が内部に溜まり始めます。
さらに、時計の防水性を保っているゴム製のパッキンが、汗や紫外線、温度変化によって経年劣化(硬化・ひび割れ)し、気密性が低下。その隙間から湿気や微細なホコリが内部に侵入しやすくなります。
最悪のシナリオ:サビの発生
この段階で最も恐ろしいのは、内部に溜まった金属粉と、外部から侵入した湿気が組み合わさることです。劣化した油も巻き込んで、まるで研磨剤のようなペースト状の汚れとなり、摩耗をさらに加速させます。
そして最終的に、水分によってムーブメント内部にサビ(腐食)が発生し始めます。一度サビが発生すると、部品の洗浄だけでは回復できず、高額な部品交換が必須となります。
明らかな時間のズレ、リューズ(時刻合わせのつまみ)を回した時の「ジャリジャリ」とした違和感など、所有者がはっきりと体感できる動作不良が頻発するようになります。
ステージ4:末期(10年〜)
摩耗やサビが限界に達し、部品が物理的に破損します(歯車の歯が欠ける、軸が折れるなど)。あるいは、サビが固着して歯車の動きを完全にロックしてしまいます。時計はついに完全に停止します。
この段階で修理を依頼すると、もはや単なるオーバーホール(分解掃除)では済みません。多数の部品交換が必須となり、修理費用が基本料金の何倍、何十倍にも膨れ上がることがあります。
さらに、古いモデルや限定モデルの場合、メーカーにも交換用部品の在庫がなく、修理不能と診断されてしまうことも…。
管理人これが、オーバーホールを怠った時計がたどる、最も悲しい末路と言える状態です。
オーバーホールはなぜ必要か?潤滑油の重要性

そもそもオーバーホールはなぜ必要かというと、その答えの多くは潤滑油の管理にあります。
時計のムーブメント(内部の機械)は、小さいものだと100個以上、複雑なものだと数百もの小さな歯車や部品が、髪の毛ほどの精度で複雑に組み合わさって動いています。これらの部品がスムーズに動き、お互いを削り合うことなく摩耗するのを防いでいるのが潤滑油なんです。
この潤滑油は、残念ながら永久的なものではありません。車のエンジンオイルと同じで、時間とともに劣化(酸化)したり、乾いたり、蒸発したりします。
油が切れた状態は、まさに車でいうとエンジンオイルがないまま高速道路を走っているようなもの。金属同士が直接こすれ合い、摩擦熱で焼き付いたり、どんどん摩耗が進んでしまいます。
時計の注油は芸術の域
実は、時計のムーブメントには、場所によって数種類(粘度の高いもの、低いものなど)の専用オイルが使い分けられています。そして、技術者は「0.001g単位」という、目にも見えないような極微量を、適切な箇所に適切な量だけ差していきます。
多すぎれば油が拡散して他の部品に悪影響を与え、少なすぎれば油切れを起こします。
オーバーホールとは、この古くなった油をすべて完璧に洗い流し、熟練の技術で新しいキレイな油を差し直すことで、時計を「新品出荷時に近いスムーズな状態」にリセットする、非常に高度で不可欠な作業なんですね。
オーバーホールは、この時計の血液とも言える潤滑油を総入れ替えし、時計の寿命を延ばすために絶対に欠かせない作業なんです。
10年20年放置した末路とは?修理不能のリスク


じゃあ、使わずに10年、20年と完全に放置したらどうなるの?
これは、使っている場合とはまた別の、深刻なリスクがあります。
先ほどのステージ4(末期)が、湿気やホコリの中でゆっくりと進行した状態ですね。動かしていなくても油は自然に劣化・固着します。
内部はサビだらけになり、劣化した油はホコリや微細な金属粉と混ざってヘドロのように固着し、歯車は完全に動かなくなります。
クォーツ式特有のリスク:電池の液漏れ
そして、クォーツ式時計の場合、これ以上に最悪なのが電池の液漏れです。
時計が止まったまま(=電池切れのまま)長期間放置すると、電池から電解液が漏れ出します。この液体は強いアルカリ性(または酸性)で、ムーブメントの精密な電子回路や歯車を化学的に腐食させ、物理的に破壊してしまいます。
回路基板が腐食したら、ムーブメント全体の交換が必須となり、数万円以上の高額な修理費用が発生します。
修理不能になる部品供給の壁
10年、20年と放置された時計、特にアンティークやヴィンテージと呼ばれる古いモデルの場合、交換用の部品(歯車、回路、文字盤など)がメーカーにもう存在しない部品供給終了となっているケースが非常に多いです。
サビや摩耗、液漏れで部品がダメになっていても、交換する部品がこの世になければ、どんなに優れた技術者でも修理はできません。
残念ながら修理不能と診断されてしまいます。大切な思い出の時計が二度と動かなくなる…これが一番悲しい末路ですね。
高級時計をオーバーホールしないと資産価値は?

ロレックスやオメガ、グランドセイコーのような高級時計は、資産としての側面も持ちますよね。この資産価値(リセールバリュー)を維持する上で、オーバーホールは非常に重要です。
買取査定時にオーバーホール頻度は確認される
買取査定に出す際、プロは時計の外装のキズだけでなく、専用の機械を使って内部の状態(コンディション)も厳しくチェックします。オーバーホールを定期的に受けているかはその大きな判断材料です。
もし高級時計をオーバーホールしないまま放置し、「要オーバーホール」あるいは内部にサビや摩耗が見つかれば、当然ながら査定額は大幅にダウンします。
なぜなら、買取店が次に販売する前に、その時計の修理費用(数万~数十万円)を負担しなければならないからです。その修理費用が、そのまま査定額から差し引かれる形になるんですね。
修理明細書が信頼の証になる
逆に、メーカーや優良修理店で発行された定期的なオーバーホールの実施履歴(修理明細書や保証書)があれば、それはこの時計が大切に扱われ、内部コンディションが良好である証拠となり、高い評価につながります。
管理人特に中古市場では信頼性が価格に直結します。
将来的に手放す可能性も考慮するなら、定期メンテナンスはご自身の資産価値を守るためにも、欠かせない投資と言えますね。
時計の放置リスク。サビと湿気の脅威

時計の放置リスクとして、潤滑油の劣化と並んで怖いのが湿気とサビです。これは特に、日本の高温多湿な気候では注意が必要です。
ダイバーズウォッチだから水は大丈夫、10気圧防水だから安心、と思っている方も多いかもしれませんが、その考えが最も危険です。
なぜなら、時計の防水性は、リューズや裏蓋、風防(ガラス)の隙間に使われているゴム製のパッキン(ガスケット)によってのみ保たれているからです。
このパッキンもゴム製品である以上、消耗品です。汗に含まれる塩分や皮脂、紫外線、日々の温度変化などで、使用していなくても数年経つと必ず弾力性を失い、硬化し、ひび割れてきます。
劣化したパッキンの隙間から、目に見えないレベルの湿気や水分が時計内部に侵入し、ムーブメントに致命的なサビを発生させてしまうんです。
オーバーホールでは、ムーブメントの洗浄・注油と同時に、これら全てのパッキンを必ず新品に交換し、専用の機械で防水検査も行います。防水性能を維持する意味でも、オーバーホールは非常に重要なんですよ。
オーバーホールとメンテナンスの違いとは?

オーバーホールとメンテナンスって、似ているようで実は意味が違います。
電池交換はメンテナンス?修理とオーバーホールはどう違うの?と混乱される方も多いので、オーバーホールとメンテナンスの違いをここで一度、簡単に整理しますね。
以下の表にまとめてみました。
| 用語 | 目的 | 作業内容 | タイミング |
|---|---|---|---|
| オーバーホール (OH) | 予防・リセット | 全分解、洗浄、点検、部品交換、再組立て、注油、調整。時計の性能を新品時に近づける。 | 問題が起こる前に、3~10年ごと。 |
| メンテナンス | 維持・管理 | 時計の状態を良好に保つ行為全般。OHも電池交換も修理も、広義では全てメンテナンスに含まれる。 | 随時。 |
| 修理 (Repair) | 事後対応 | 止まった、水が入った、リューズが抜けた等、壊れた箇所を特定し、直す(部品交換など)。 | 問題が起こった後に、随時。 |
| 電池交換 | 動力源の交換 | 切れた電池を新しいものに交換する作業。内部の機械部分の洗浄や注油は含まない。 | 1~10年ごと(時計による)。 |
ここでのポイントは、電池交換だけしていても、内部の機械部分(歯車)の潤滑油は劣化・摩耗し続けている、ということです。
止まったら修理に出すという考え方だと、その故障の原因が内部の油切れやサビだった場合、結局は「修理(高額な部品交換)+オーバーホール」が必要になり、費用が非常に高額になりがちです。
そうなる前に、定期的なオーバーホールで予防することが、結果的に時計を長持ちさせ、トータルコストも抑えることに繋がるんです。
時計のオーバーホールしないはNG!実際の費用と頻度は?

オーバーホールの重要性は分かったけれど、やっぱり一番気になるのは、じゃあ具体的にいくらかかるの?という費用と、どれくらいの頻度でやればいいの?という現実的な問題ですよね。
もったいないと感じてしまうのも、この部分がハッキリしないからかもしれません。ここでは、気になる具体的な目安について、詳しくお話しします。
オーバーホールの頻度と目安

オーバーホールの頻度の目安は、時計の駆動方式(機械式かクォーツ式か)や、メーカーの設計思想によって異なります。
あくまで一般的な目安ですが、まずはこの期間を覚えておかれると良いかと思います。
推奨されるオーバーホールの頻度
先に結論からお伝えしておきます。駆動式ごとのオーバーホールの頻度は次のとおりです。
- 機械式時計:3年~5年に1度
- クォーツ式時計:5年~10年に1度
最近では、ロレックスの近年のモデルや、オメガのコーアクシャル搭載機など、メーカー自身が「10年推奨」とうたうモデルも増えてきました。これは、ムーブメントの構造(摩擦の軽減)や潤滑油そのものの化学的進歩によるものです。
ただし、これはあくまで最新技術が投入された一部のモデルの話。お持ちの時計の正確な推奨期間は、一度メーカーの公式サイトや購入店で確認されると安心ですね。(例:お買い上げから3~4年目の分解掃除はその後永く使う上でとても大切です。(出典:セイコーウオッチ株式会社)
機械式時計の方が頻度が高いのは、クォーツ式に比べて部品点数が圧倒的に多く、ゼンマイの強い力で常に部品が動き続けており、摩擦も大きいためです。
そのため、潤滑油のコンディション管理が、時計の精度や寿命によりシビアに影響するからなんです。
機械式時計とクォーツ式時計の違い

オーバーホールに関して、機械式時計とクォーツ式時計では、放置した場合のリスクの現れ方が大きく異なります。この違いを知っておくことは、ご自身の時計のSOSサインを見逃さないためにとても大切です。
機械式時計のリスク:症状が出やすいが、摩耗が深刻
ゼンマイのほどける力を動力源とする機械式時計は、非常に繊細なバランスで動いています。そのため、内部の油が切れて摩擦抵抗が大きくなると、すぐに時計の心臓部である「テンプ」の動きが不安定になり、時間のズレ(精度の悪化)として症状が現れやすいのが特徴です。
症状が出やすい分、「あ、調子悪いな」と気づきやすいとも言えます。しかし、その調子が悪い状態で使い続けることは、ヤスリで部品を削りながら時計を動かしているようなもの。
気づいた時には、歯車の軸などが深刻に摩耗している危険性があります。
クォーツ式時計のリスク:症状が出にくいが、末期症状は突然
電池とモーター(ステップモーター)で動くクォーツ式時計は、高精度な電子回路(水晶振動子)が時間の基準です。
クォーツの怖いところは、内部の歯車の油が切れて摩擦抵抗が増えても、高精度な回路の指示に基づき、強力なモーターが無理やり歯車を動かして、表面上の精度を維持しようとする点です。
内部で歯車が削れて悲鳴を上げていても、所有者は高精度な時刻表示に満足してしまい、トラブルに全く気づきにくいんです。
所有者が気づくことのできるほぼ唯一のサインは電池の消耗が異常に早くなること(例:2年持ったものが1年で切れる)ですが、これは「たまたま電池の個体差かな?」と見過ごされがちです。
そして、気づいた時には「電池交換してもすぐ止まる」という、ムーブメントが深刻な摩耗状態に陥った末期症状になっているか、あるいは長期間の放置による電池の液漏れで回路が破壊されている…というケースが少なくないんです。
オーバーホールは必要?不要?クォーツの場合

クォーツ時計は安いし、止まったら電池交換すればいい、オーバーホールなんて不要だ、と聞いたことがあるかもしれませんが、これは明確な誤解です。
クォーツ時計もオーバーホールは必要
確かに、クォーツは機械式に比べて部品の摩擦が少なく、メンテナンスフリー期間も長めに設計されています。
ですが、クォーツも「針」を動かしている以上、その針を動かすためには必ず「歯車(輪列)」という機械的な構造を持っています。そして、その歯車がスムーズに動くためには、軸受けに潤滑油が使われています。
この油が時間と共に劣化することは、機械式時計とまったく同じです。そのため、クォーツ式であっても、内部の機械部分のコンディションをリセットするための定期的なオーバーホール(分解掃除・注油)は、長く使い続けるためには必要。
管理人「電池交換だけしていればOK」ではない、という点はぜひ覚えておいてくださいね。
安価な時計の場合の「買い替え」という選択
もちろん、時計の購入価格が、想定されるオーバーホール費用(例えば2~3万円)を下回る、あるいは同等である安価な時計の場合、純粋なコストパフォーマンスのみで判断すれば、買い替えるというのも経済合理性のある選択肢の一つです。
ただし、その時計が誰かからの記念品であったり、形見であったり、お金には代えられない感情的な価値を持つ品である場合、オーバーホールは機能を維持し、思い出を守るという非常に重要な価値を持ちます。
この選択は、経済合理性と感情的価値を天秤にかけ、所有者ご自身が判断すべき領域ですね。
オーバーホールはもったいない?費用比較

まだ動くのに数万円払うのは、やっぱりオーバーホールはもったいない…そのお気持ち、コストを考える上でとてもよく分かります。
でも、これは費用(コスト)ではなく投資(インベストメント)だと考えてみてはいかがでしょうか?
例えば、人間の健康に例えると、数年ごとに1万円払って健康診断(予防)を受けるか、10年放置してガンが見つかり、50万円払って緊急手術(事後対応)を受けるか、という比較に似ています。
15年間のトータルコストを、仮に「基本OH代5万円、部品交換代10万円」としてシミュレーションしてみましょう。
| メンテナンスプラン | 5年時点 | 10年時点 | 15年時点 | 15年間のトータルコスト |
|---|---|---|---|---|
| A) 予防プラン(5年毎にOH) | OH代: 5万円 | OH代: 5万円 | OH代: 5万円 | 150,000円 (常に健康な状態) |
| B) 放置プラン(10年目に故障) | 0円 | OH代 5万 + 部品代 10万 | OH代: 5万円 | 200,000円 (10年目に高額出費) |
| C) 完全放置プラン(15年目に重篤故障) | 0円 | 0円 | OH代 5万 + 重度部品代 20万 | 250,000円 (修理不能のリスクも) |
※これはあくまで単純な試算です。
ご覧の通り、目先の数万円を惜しんだ結果、数年後に何倍もの高額な修理費用が発生し、トータルコストでも損をしてしまう…。これこそが一番もったいない状況だと私は思います。
定期的なオーバーホールは、将来必ず発生するであろう高額な修理代を防ぐための、最も合理的で安価な投資なんですね。
オーバーホールの値段と相場

では、具体的にオーバーホールの値段と相場はどれくらいなのでしょうか。これは本当にピンキリで、ブランド(国産か海外か)、機構(シンプルな3針か、複雑なクロノグラフか)、そして依頼先(メーカー正規か、修理専門店か)によって大きく変わります。
あくまで一般的な目安として、参考程度にご覧ください。
| 依頼先 | 国産ブランド (例: セイコー, シチズン) | 海外ブランド (例: オメガ, タグ・ホイヤー) | 高級ブランド (例: ロレックス, IWC) |
|---|---|---|---|
| メーカー正規サービス | 約30,000円~60,000円 | 約60,000円~90,000円 | 約70,000円~100,000円超 |
| 民間の時計修理専門店 | 約15,000円~30,000円 | 約25,000円~50,000円 | 約40,000円~60,000円 |
※これは基本料金の目安です
上記の金額は、あくまで部品交換が必要ない場合の基本オーバーホール料金の目安です。
もし長期間の放置によって内部にサビや摩耗が発生し、歯車の交換や文字盤の交換などが必要になった場合、この基本料金に数千円~数十万円の高額な部品代が別途加算されます。
また、ストップウォッチ機能付きのクロノグラフや、カレンダー機能が複雑なパーペチュアルカレンダーなどは、部品点数が多いため、上記の基本料金よりも数万円高くなるのが一般的です。
正確な料金は、必ず依頼先に見積もりを依頼して確認してくださいね。
オーバーホールの依頼先の選び方

オーバーホールの依頼先には、大きく分けてメーカー正規サービスと民間の時計修理専門店の2つの選択肢があります。どちらも一長一短ありますので、ご自身の時計の状況や何を優先するかで選ぶのがおすすめです。
1. メーカー正規サービス
まずはメーカーの正規サービスでのメリット・デメリット、どんな人に向いているか?をまとめていきます。
メリット
- メーカーの基準に基づく絶対的な技術的安心感があります。
- 交換部品は100%純正部品が使用されます。
- 最新の専用設備で検査・調整が行われます。
- 修理後はメーカーの国際サービス保証が付く場合が多いです。
デメリット
- 料金が民間の修理専門店に比べて高額になる傾向があります。
- 見積もりや修理の納期が数ヶ月単位と、非常に長くなる場合があります。
- 製造終了から時間が経った古いモデルは、修理受付を終了している場合があります。
- 購入したばかりの保証期間内の方
- 最新の高級モデルをお持ちの方。
- 費用や納期がかかっても絶対に安心な方法を選びたい方
2. 民間の時計修理専門店
続いて民間の時計修理専門店に依頼した場合のメリット・デメリット、どんな人に向いているかをまとめていきます。
メリット
- 料金がメーカー正規に比べて比較的安価な傾向があります。
- 見積もりや納期が比較的早い(数週間程度)場合があります。
- メーカーで修理受付が終了した古いアンティーク時計なども、高い技術で対応してくれるお店があります。
デメリット
- お店によって技術力や設備にバラつきがあります。
- 悪質なお店に当たると、粗悪な修理をされるリスクもゼロではありません。
- 純正部品が手に入らず、代替部品(ジェネリックパーツ)が使われる場合もあります。
- メーカー保証が切れている方
- 少しでもコストを抑えたい方
- 納期を早めたい方
- メーカーで修理を断られた古い時計をお持ちの方。
優良な修理専門店の見極め方
民間の修理専門店を選ぶ場合は、信頼できるお店を見極めることが何よりも重要です。以下のような点をチェックするのがおすすめです。
- 時計修理技能士という国家資格を持った技術者が在籍しているか。
- メーカー(ロレックスやオメガなど)出身の技術者がいるか。
- 作業内容や見積もりを丁寧に説明してくれるか。
- 修理後の保証(通常6ヶ月~1年)をしっかり付けてくれるか。
どちらが良いかは一概に言えませんが、まずは両方の選択肢を検討し、見積もりを取ってみるのが良いかと思います。
管理人いずれにせよ、最終的な判断は専門の技術者の方にご相談されることを強く推奨します。
時計をオーバーホールしないとどうなる:総括

さて、本当に長くなりましたが、時計をオーバーホールしないとどうなるかの最終的な結論です。
その答えは、確実に、ゆっくりと、そして放置した期間に比例して、修理費用が高額になる深刻な故障に向かって進んでいく、です。
時計は、私たちが思っている以上にデリケートな存在です。止まるまでが健康なのではありません。その精密な内部は、潤滑油やパッキンといった、必ず劣化する消耗品によって、その寿命をかろうじて支えられているんです。
オーバーホールは、時計にとっての人間ドックや車検と全く同じです。
まだ動くから、まだ症状が出ていないからと健康診断を怠り続けた結果、病気が見つかった時にはすでに手遅れ(=高額な手術や治療不能)になっている…。時計のオーバーホールを怠ることは、それと全く同じ行為なんですね。
皆様の大切な時計の性能、そして資産としての価値を、10年後、20年後も守るために。ぜひコストとしてではなく、時計への愛情であり、将来への賢い投資として、定期的なオーバーホールをご検討ください。
まずは一度、ご自身の時計が今どんな状態なのか、専門家に見積もりを相談してみることから始めてはいかがでしょうか。

