ロレックスのラインナップの中でも、プロフェッショナルなダイバーズウォッチとして独自の立ち位置を確立しているシードゥエラー。
しかし、インターネット上では「シードゥエラーは人気ない」といった声も聞かれます。
なぜ人気がないと感じる人がいるのでしょうか。ケースが大きすぎるといった評価や、サブマリーナとの違いは何なのかという疑問を持つ方も少なくないでしょう。
さらに、ロレックスのモデルで手に入らないランキングにおけるシードゥエラーの序列や、シードゥエラーとディープシーの関係性、そしてコンビモデルの人気度合いも気になるところです。
一方で、希少な赤シードや名機と名高い16600、短命に終わった116600などのモデルは高い資産価値を誇り、実際の買取相場も安定しています。愛用する芸能人の存在も、その魅力を裏付けているのかもしれません。
この記事では、シードゥエラーが人気ないとされる背景を深掘りしつつ、他のモデルにはない専門的な機能性や隠れた価値、そして将来性について、多角的な視点から徹底的に解説していきます。
- シードゥエラーが人気ないと言われる具体的な理由
- サブマリーナやディープシーとのスペックや価格の違い
- 希少モデルの存在と安定した資産価値
- 自分に合ったモデル選びのポイント
シードゥエラーは人気ない?その理由を徹底分析
シードゥエラーはなぜ人気がないと言われるのか
シードゥエラーが一部の時計愛好家から「人気がない」と評される背景には、いくつかの明確な理由が存在します。これは決して時計の性能が劣っていることを意味するのではなく、その極めて専門的な成り立ちと特性に起因するものです。
これらの理由を一つずつ理解することで、シードゥエラーというモデルの真価と、なぜ特定のファンを強く惹きつけるのかが見えてきます。
万能モデル「サブマリーナ」の圧倒的な存在感
まず最も大きな理由として挙げられるのが、同じダイバーズウォッチカテゴリに存在する「サブマリーナ」の圧倒的な知名度と人気です。サブマリーナは、ロレックスの顔とも言える存在であり、ダイバーズウォッチの完成形として世界中で広く認知されています。
洗練されたデザインはビジネスシーンからカジュアルまで対応可能で、300mという防水性能は多くの人にとって理想的なスペックです。
これに対してシードゥエラーは、元々サブマリーナの上位機種として、よりプロフェッショナルな潜水活動のために開発されました。そのため、デザインの基本は共有しつつも、より専門的な機能を付加したモデルという位置づけです。
しかし、この「見た目が似ている」という点が、逆にシードゥエラーの個性を分かりにくくさせ、初めてロレックスのダイバーズウォッチを選ぶ多くの人が、より知名度が高く万能なサブマリーナを選択する傾向につながっています。
一般ユーザーには過剰なプロ仕様のスペック
シードゥエラーの核となる魅力は、そのプロフェッショナル仕様のハイスペックさにあります。しかし、この点が一般ユーザーにとっては「オーバースペック」、つまり過剰性能に感じられることが少なくありません。
例えば、現行モデルが誇る1,220mという防水性能は、東京タワー(333m)が3つ以上も水中に沈むほどの驚異的な水圧に耐えることを意味します。また、ケースサイドに備えられた「ヘリウムガスエスケープバルブ」は、飽和潜水という特殊な深海活動の際に、時計内部に侵入したヘリウムガスを自動で排出し、風防の破損を防ぐための機構です。
これらの機能は、深海で活動するプロのダイバーにとっては命綱とも言える重要なものですが、日常生活でその恩恵を受ける場面は皆無と言ってよいでしょう。
そのため、多くのユーザーは「ここまでの性能は必要ない」と感じ、よりシンプルで価格も抑えられたサブマリーナへと関心が向かいやすいのです。
装着感を選ぶ重厚なサイズとデザイン
前述のプロフェッショナルな機能を搭載するために、シードゥエラーは必然的に大きく、厚く、そして重い設計になっています。この重厚なサイズ感もまた、ユーザーを選ぶ大きな要因となっています。
現行モデルのケース径は43mm、さらに上位機種のディープシーは44mmにも達し、サブマリーナの41mmと比較して明らかに存在感を主張します。特に厚みがあるため、長袖シャツの袖口に収まりにくかったり、長時間のデスクワークで手首への負担を感じたりする可能性も指摘されます。
デザイン面においても、このサイズ感が「武骨」「ツール(道具)感が強い」といった印象を与えます。
サブマリーナが持つスポーティでありながらもエレガントな万能性と比較すると、シードゥエラーはより専門的な道具としての性格が色濃く、ファッションとして合わせるには少し癖が強いと感じる人がいるのも事実です。
これらの点を総合すると、シードゥエラーは決して性能が低いわけではなく、むしろその専門性の高さゆえに、万能型のサブマリーナと比べるとターゲット層が限定され、「人気がない」という印象につながっていると考えられます。
ケースが大きすぎという評価は本当か
上述したとおりシードゥエラーに対して「ケースが大きすぎ」という評価がなされることは少なくありませんが、これはモデルの歴史と変遷を見ると、一概には言えない部分もあります。
歴代モデルのケースサイズ
初期のモデルや、1990年から長きにわたり製造されたRef.16600は、ケース径が40mmでした。これは当時のサブマリーナとほぼ同じサイズであり、多くの日本人男性の腕にも馴染みやすい大きさでした。
このため、旧モデルのシードゥエラーに対しては、「大きすぎる」という印象はあまり当てはまりません。
現行モデルとディープシーのサイズ感
評価が大きく変わったのは、2017年に登場した現行のRef.126600からです。このモデルからケース径は43mmへと大型化されました。さらに、上位機種である「ディープシー」に至ってはケース径が44mm、厚みも17.7mmと、ロレックスのラインナップの中でも最大級のサイズを誇ります。
この43mmや44mmというサイズは、手首が細い方や、軽快な装着感を好む方にとっては、確かに「大きすぎ」と感じられる可能性が高いです。時計の厚みも増しているため、シャツの袖口に収まりにくいといった実用面でのデメリットを指摘する声もあります。
したがって、「大きすぎ」という評価は、主に現行モデルやディープシーに向けられたものと考えるのが妥当です。40mmサイズの旧モデルであれば、サブマリーナに近い感覚で装着可能です。
サイズ感を理由にシードゥエラーを敬遠していた方は、Ref.16600やRef.116600といったモデルを検討してみる価値はあるでしょう。
サブマリーナとの違いは?どちらが高い?
シードゥエラーとサブマリーナは、見た目が似ているため混同されがちですが、その出自やスペックには明確な違いが存在します。
どちらを選ぶか悩んでいる方のために、両者の違いと価格について解説します。
スペックの主な違い
最大の違いは、プロフェッショナルダイバー向けに設計されたかどうかという点に集約されます。
項目 | シードゥエラー (Ref.126600) | サブマリーナー・デイト (Ref.126610LN) |
防水性能 | 1,220m | 300m |
ヘリウムガスエスケープバルブ | あり | なし |
ケースサイズ | 43mm | 41mm |
サイクロップレンズ | あり | あり |
裏蓋 | チタン製(刻印あり) | ステンレス製(刻印なし) |
このように、シードゥエラーはサブマリーナの約4倍の防水性能を誇り、飽和潜水に対応するヘリウムガスエスケープバルブを搭載している点が大きな特徴です。
前述の通り、ケースサイズもシードゥエラーの方が大きく、より堅牢な作りになっています。かつてはサイクロップレンズの有無が外見上の大きな違いでしたが、現行のRef.126600には搭載されており、この点での差はなくなりました。
価格はどちらが高いか
価格については、一般的にスペックが上位であるシードゥエラーの方が、サブマリーナよりもメーカー希望小売価格は高く設定されています。より高い防水性能を実現するための堅牢なケース構造や、ヘリウムガスエスケープバルブといった機構が価格に反映されていると考えられます。
ただし、中古市場や並行輸入市場における実勢価格は、需要と供給のバランスによって変動します。圧倒的な人気を誇るサブマリーナは、時に定価を大幅に超えるプレミア価格で取引されることもあり、一概にシードゥエラーの方が常に高価であるとは限りません。
購入を検討する際は、定価だけでなく、市場での価格動向も注視することが大切です。
シードゥエラーとディープシーの立ち位置
シードゥエラーのラインナップを語る上で、2008年に登場した上位機種「シードゥエラー ディープシー」の存在は欠かせません。この2つのモデルは、同じ「海の居住者」の名を冠しながらも、想定される潜水深度において明確な立ち位置の違いがあります。
シードゥエラーは、フランスの潜水専門会社コメックス社との共同開発から生まれた、プロフェッショナルダイバー向けの腕時計です。水深1,220mという防水性能は、人間が活動する飽和潜水の領域をカバーしており、あくまで「プロが使用するツール」としての側面が強いモデルと言えます。
一方、ディープシーは、その限界をさらに超越することを目指して開発されました。3,900mという驚異的な防水性能は、もはや有人潜水艇でなければ到達不可能な、まさに極限の深海領域をターゲットにしています。
この耐圧性を実現するために、ロレックスは「リングロックシステム」という特許技術を開発しました。
リングロックシステムとは、サファイアクリスタルガラス、窒素合金スチール製のセンターリング、そしてチタン合金製の裏蓋の3つのパーツで構成される革新的なケース構造で、水圧を時計全体で受け止める仕組みです。
要するに、シードゥエラーが「プロダイバーのための腕時計」であるならば、ディープシーは「ロレックスの技術力の結晶であり、深海探査への挑戦を象徴する腕時計」という位置づけになります。
その分、ディープシーはケースサイズが44mmとさらに大きく、重厚感も増すため、実用性よりもロマンやブランドの技術的背景に価値を見出すユーザーに選ばれる傾向があります。
中間的な立ち位置で人気がないのか?
シードゥエラーが一部で人気を得にくい理由の一つに、その「中間的な立ち位置」が挙げられます。これは、ロレックスのダイバーズウォッチのラインナップにおける、サブマリーナとディープシーとの関係性から来ています。
多くのユーザーがロレックスのダイバーズウォッチを求める際、まず選択肢に挙がるのは、知名度、デザインの普遍性、そしてリセールバリューの高さから「サブマリーナ」です。日常使いからビジネスシーンまで幅広く対応できる万能性は、他のモデルにはない大きな魅力となります。
一方で、ロレックスの持つ技術力の限界や、究極のスペックを求めるコアなファンやコレクターは、3,900m防水という圧倒的な性能を持つ「ディープシー」に惹かれます。その巨大なケースや重厚感は、まさに究極のツールウォッチとしての存在感を放ちます。
この両者に挟まれる形で、シードゥエラーは存在します。スペックはサブマリーナを凌駕しますが、ディープシーほどの極限性能はありません。サイズもサブマリーナより大きく、ディープシーよりは小さい。このため、「サブマリーナでは物足りないが、ディープシーはやりすぎだ」と感じる、非常に限定された層にしか響きにくいという側面が生まれます。
このような理由から、購入者の選択肢が両極端のモデルに二分されやすく、結果としてシードゥエラーが「中途半端」「立ち位置が曖昧」と見なされ、人気が伸び悩む一因になっていると考えられます。
ロレックスが手に入らないランキングでの位置
近年、ロレックスの正規店で希望のモデルを購入するのは非常に困難な状況が続いており、時計ファンの間では、いわゆる「ロレックス入手難易度ランキング」がしばしば話題に上ります。
この中でシードゥエラーがどのような位置づけにあるのかを、以下の表を交えながら考察します。
まず、ランキングの頂点に君臨するのは、間違いなくステンレススチール製の「コスモグラフ デイトナ」です。これに「GMTマスターII」のペプシやバットマンといった人気カラーモデル、「サブマリーナ」のステンレスモデルが続きます。これらのモデルは需要が供給をはるかに上回っており、正規店で偶然出会える可能性は限りなく低いのが現状です。
それでは、シードゥエラーはどのあたりに位置するのでしょうか。
ロレックス入手難易度ランキング(2025年版 目安)
入手難易度 | モデル名 | 概要・特徴 |
レベルSS (極めて困難) | コスモグラフ デイトナ (ステンレスモデル) | 「キング・オブ・ロレックス」と称される最高峰モデル。正規店での遭遇は奇跡に近く、入荷しても常連顧客に優先的に案内されることがほとんど。圧倒的な需要に対し供給が全く追いついていない。 |
レベルS (非常に困難) | GMTマスターII (ペプシ・バットマンなど) | 2色のベゼルが特徴的な人気モデル。特に「ペプシ(赤青)」や「バットマン(黒青)」と呼ばれるステンレスモデルはデイトナに次ぐ入手難易度を誇り、店頭に並ぶことはほぼない。 |
レベルA (困難) | サブマリーナ (ステンレスモデル) | ダイバーズウォッチの象徴であり、絶大な人気を持つ。デイトナやGMTマスターIIほどではないものの、こちらも需要過多の状態が続いており、購入には幸運とタイミングが不可欠。 |
レベルB (やや困難) | シードゥエラー | 本記事で解説しているプロフェッショナルモデル。上記の超人気モデルと比較すると難易度は一段階下がる。しかし、生産数が少なく安定した需要があるため、決して簡単には手に入らない。「穴場モデル」と評されることもあるが、それでも正規店での購入は容易ではない。 |
レベルC (比較的入手しやすいモデル) | デイトジャスト、オイスターパーペチュアルなど (一部の特殊文字盤やサイズを除く) | ロレックスのクラシックライン。素材やサイズのバリエーションが豊富なため、プロフェッショナルモデルに比べると希望の仕様に出会える可能性は高い。ただし、人気の文字盤カラーなどは品薄状態が続く。 |
この表が示すように、シードゥエラーはデイトナやGMTマスターII、サブマリーナといった超人気モデルと比較すると、入手難易度は「やや困難」なレベルBに位置づけられます。
しかし、だからといって簡単に購入できるわけではありません。シードゥエラーもプロフェッショナルモデルの一つであり、生産数が限られています。
特にサブマリーナとデザインが似ていることから、サブマリーナを探している顧客への代替案として紹介されることもあるようですが、それでも店頭に在庫が並ぶことは稀です。
言わば、シードゥエラーは「超人気モデルではないが、決して不人気でもなく、安定した需要があるため入手は容易ではない」という絶妙な立ち位置にいます。
この点が、一部の時計愛好家からは「狙い目」「穴場モデル」と見なされることもあります。爆発的な人気はないものの、その分、過度なプレミア価格がつきにくく、比較的落ち着いて探せる可能性がある点は、一つのメリットかもしれません。
シードゥエラーは人気ないが価値あるモデル
安定したシードゥエラーの資産価値
シードゥエラーは、デイトナやGMTマスターIIのような急激な価格高騰は起こりにくい一方で、資産価値が非常に安定しているモデルとして知られています。その背景には、ロレックス全体のブランド価値と、シードゥエラーならではの特性が関係しています。
ロレックスのスポーツモデルは全般的に需要が高く、中古市場でも価格が下がりにくい傾向があります。シードゥエラーもその例に漏れず、プロフェッショナル仕様の堅牢な作りと信頼性から、時計としての基本的な価値が市場で高く評価されています。
また、前述の通り、シードゥエラーはサブマリーナほど流通量が多くありません。この生産数の少なさが希少性を生み、価格を安定させる要因となっています。人気が過熱しすぎない分、相場の乱高下が少なく、投機的な目的で売買されることが少ないため、長期的に価値を維持しやすいのです。
特に、生産が終了した旧モデルや、後述する特殊なモデルは、年々その希少価値が高まり、価格が上昇していく可能性を秘めています。したがって、シードゥエラーを所有することは、短期的なリターンを狙う投資というよりは、価値が目減りしにくい実物資産を長期的に保有するという考え方に近いかもしれません。
使いながらその価値を楽しめる、実用的な資産としての魅力があるのです。
最新のモデル別買取相場をチェック
シードゥエラーの資産価値を具体的に知る上で、買取相場は重要な指標となります。ただし、相場は常に変動するため、あくまで参考情報として捉えておいてください。
ここでは、主要モデルの一般的な買取価格の傾向を見ていきます。
(2025年7月時点の参考情報)
モデル (リファレンス) | 特徴 | 買取相場(中古・良品)の目安 |
Ref.126600 | 現行赤シード (43mm) | 約150万円~180万円 |
Ref.116600 | 短命モデル (40mm) | 約170万円~210万円 |
Ref.16600 | 旧モデル (40mm) | 約110万円~130万円 |
Ref.126660 (D-BLUE) | ディープシー (グラデーション) | 約170万円~190万円 |
Ref.136660 (D-BLUE) | 最新ディープシー | 約160万円~180万円 |
表からわかるように、現行モデルであるRef.126600は安定した価格で取引されています。
注目すべきは、わずか3年で生産終了となったRef.116600です。その希少性から、現行モデルに匹敵する、あるいはそれを上回る価格で取引されることも珍しくありません。
また、40mmケースで長年親しまれたRef.16600も、使いやすさと完成度の高さから根強い人気があり、価格は上昇傾向にあります。ディープシーの中でも、特殊なブルーグラデーション文字盤を持つ「D-BLUE」は特に人気が高く、通常のブラック文字盤よりも高値で取引されるのが一般的です。
これらの価格は、時計の状態、保証書や箱などの付属品の有無によって大きく変動します。売却を検討する際は、複数の専門業者に査定を依頼し、適正な価格を見極めることが鍵となります。
希少価値が高い赤シードという存在
シードゥエラーの歴史と価値を語る上で、「赤シード」と呼ばれるモデルの存在は絶対に外せません。この特別なモデルが、シードゥエラーのコレクターズアイテムとしての地位を不動のものにしています。
初代「赤シード」 Ref.1665
最初の「赤シード」は、1967年に登場した初代シードゥエラーRef.1665の一部に見られます。このモデルは、文字盤の「SEA-DWELLER」と、その下の防水性能を示す「SUBMARINER 2000」の文字が赤い塗料でプリントされているのが特徴です。
この赤文字の仕様は、製造初期の約10年間しか存在せず、生産数が極めて少ないため、ヴィンテージロレックス市場では伝説的なモデルとして扱われています。
特に文字盤の仕様によって「マークI」から「マークIV」まで細かく分類され、その中でも初期のものは数百万、時には一千万円に迫る価格で取引されることもある、まさに幻の逸品です。
50周年記念「赤シード」 Ref.126600
そして2017年、シードゥエラー誕生50周年を記念して、現行モデルRef.126600が登場しました。
このモデルは、初代へのオマージュとして、文字盤の「SEA-DWELLER」の文字を再び赤で表記し、時計ファンの間で大きな話題を呼びました。43mmへのサイズアップやサイクロップレンズの初採用など、現代的なアップデートが施されつつも、この赤文字があることで特別なモデルとして認識されています。
このように、「赤シード」という存在は、シードゥエラーが単なるツールウォッチではなく、ロレックスの歴史と物語性を宿した、非常に魅力的なコレクションピースであることを象徴しています。
名機16600と短命モデル116600の魅力
現行モデル以前のシードゥエラー、特にRef.16600とRef.116600は、それぞれ異なる魅力でコレクターや時計愛好家から高い評価を受けています。
バランスの取れた名機 Ref.16600
Ref.16600は、1990年頃から2008年頃まで約20年間にわたり製造されたロングセラーモデルです。このモデルの最大の魅力は、40mmという絶妙なケースサイズにあります。
現行モデルのような大きさや重さがなく、サブマリーナに近い感覚で日常使いできる装着感の良さが特徴です。デザインもシンプルで、サイクロップレンズがないスッキリとした日付表示は、シードゥエラー本来のスタイルとして好むファンが多くいます。
長期間製造されたため個体数は多いですが、その分、状態の良い個体や最終品番(V番)などは価値が高まる傾向にあり、実用性と資産性を兼ね備えた名機として根強い人気を誇ります。
希少な短命モデル Ref.116600
一方、Ref.116600は2014年から2017年までのわずか3年間しか製造されなかった、極めて短命なモデルです。通称「シードゥエラー4000」とも呼ばれます。
このモデルは、傷に強いセラミックベゼルや、視認性の高いクロマライト夜光塗料といった現代的なスペックを備えながら、ケースサイズは伝統的な40mmを維持していました。しかし、翌年に登場する50周年記念モデルへの布石だったのか、早々に生産を終了。
その結果、流通量が非常に少なくなり、希少価値が一気に高まりました。現代的な性能と伝統的なサイズ感を両立した唯一無二の存在として、中古市場では価格が高騰しており、将来性が期待される投資対象としても注目されています。
シードゥエラーのコンビは人気がある?
一般的に、プロフェッショナル向けのツールウォッチであるシードゥエラーは、堅牢なステンレススチール素材のイメージが強いかもしれません。しかし、2019年に登場したRef.126603は、ステンレススチールと18Kイエローゴールドを組み合わせた、通称「コンビモデル」です。
このコンビモデルの人気については、評価が分かれるところです。まず、シードゥエラーの持つ「プロの道具」というストイックなイメージと、ゴールドの持つ華やかなイメージが相反すると感じる層からは、あまり支持されていません。
純粋なツールウォッチとしての機能美を求めるファンにとっては、ステンレスモデルの方が魅力的と映るようです。
一方で、このコンビモデルには独自の魅力があります。ベゼルやリューズ、ブレスレットのセンターリンクに配されたイエローゴールドが、ダイバーズウォッチにラグジュアリーな雰囲気を加えています。
文字盤の「SEA-DWELLER」のロゴもゴールドカラーで統一されており、「金シード」の愛称で呼ばれることもあります。
このモデルは、他人とは違う、より個性的で高級感のあるダイバーズウォッチを求める層に響きます。爆発的な人気というよりは、特定のファン層に深く支持されているモデルと言えるでしょう。サブマリーナのコンビモデル(青サブなど)ほどの知名度はありませんが、その分、市場で見かける機会も少なく、ある種の希少性を持っています。
ステンレスモデルの武骨さとは一線を画す、エレガントな選択肢として面白い存在です。
愛用するシードゥエラーの芸能人たち
シードゥエラーの持つ独特の魅力は、深海で活動するプロフェッショナルだけでなく、鋭い審美眼を持つ世界中の芸能人や著名人にも深く支持されています。
彼らが公の場で、あるいはプライベートでこの時計を腕にしているという事実は、シードゥエラーが単なるハイスペックなツールウォッチに留まらず、所有者の個性や哲学を雄弁に物語るステータスシンボルであり、ファッションアイテムとしての高い価値を持つことを証明しています。
世界的なアクションスターが選ぶ「強さ」の象徴
シードゥエラー、特にその上位機種であるディープシーは、屈強な肉体を持つアクションスターたちに好んで選ばれる傾向があります。これは、モデルの持つ堅牢な世界観と、彼らのパブリックイメージが非常によく一致するためと考えられます。
例えば、俳優のシルベスター・スタローン氏は、ロレックスの熱心なコレクターとして有名ですが、中でも44mmの巨大なケースを持つディープシーを愛用している姿が度々目撃されています。彼が演じる数々のタフなキャラクターと、どんな過酷な環境にも耐えうるディープシーのイメージは完璧に重なります。
また、同じくアクション俳優のジェイソン・ステイサム氏もディープシーの愛用者として知られています。元水泳の飛込競技選手という経歴を持つ彼にとって、ロレックスの究極のダイバーズウォッチは、自身のルーツとも親和性の高い、必然的な選択なのかもしれません。
挑戦者のスピリットを体現するモデル
シードゥエラーは、未知の領域に挑む冒険家やビジョナリーたちの精神を象徴するアイテムとしても選ばれています。
その最も象徴的な例が、世界的な映画監督であるジェームズ・キャメロン氏です。彼は2012年に、世界で最も深いマリアナ海溝チャレンジャー海淵への単独潜航を成功させましたが、その歴史的な偉業の際には彼の腕にディープシーが装着されていました。
この成功を記念し、ロレックスは深海を思わせるブルーグラデーションの特殊な文字盤を持つ「D-BLUE」ダイヤルを発表しました。これは、キャメロン監督の探求心と功績への敬意が込められた特別なモデルであり、ディープシーが単なる製品ではなく、人類の挑戦の物語と共にあることを示しています。
国内の著名人に見るシードゥエラーの多様な魅力
日本国内においても、シードゥエラーは様々な分野で活躍する著名人に愛用されています。
特に有名なのが、お笑いコンビ・バナナマンの日村勇紀さんのエピソードです。彼は人気テレビ番組の企画で、前述のジェームズ・キャメロンモデルであるディープシー「D-BLUE」を購入したことが大きな話題となりました。
一見すると高級時計のイメージとは少し異なるキャラクターかもしれませんが、この選択は、シードゥエラーが持つプロフェッショナルな魅力だけでなく、どこか遊び心や所有する喜びを感じさせる特別な存在であることを示しています。
これらの例からわかるように、シードゥエラーは、選ぶ人のライフスタイルや価値観を色濃く反映する時計です。メディアへの露出が多い彼らが着用することで、シードゥエラーの「プロ向けのニッチな時計」というイメージを払拭し、その多様な魅力と一般的な知名度向上に大きく貢献していると言えるでしょう。
シードゥエラーは人気ないが魅力的な時計
この記事を通じて、シードゥエラーが持つ多面的な評価とその背景を解説してきました。
最後に、なぜこの時計が「人気ない」と言われながらも、多くの人々を惹きつけてやまない魅力的な存在なのかをまとめます。
- シードゥエラーはプロの潜水士のために開発された本格的なダイバーズウォッチ
- 「人気ない」と言われる主な理由は万能型のサブマリーナと比較されるため
- 1220m防水やヘリウム排出バルブは日常ではオーバースペックに感じられる
- 現行モデルの43mmというサイズは一部のユーザーには大きすぎると評価される
- サブマリーナとディープシーの中間的な立ち位置がニッチな印象を与える
- 一方で資産価値は非常に安定しており急な価格下落のリスクが低い
- 生産数が少ないため希少性が生まれ長期的な価値の維持が期待できる
- 初代の「赤シード」はヴィンテージ市場で極めて高い価値を持つ
- 50周年記念モデル(Ref.126600)で赤ロゴが復活し人気を博した
- 40mmケースの旧モデル(Ref.16600)は装着感の良さから今なお根強い人気
- わずか3年で生産終了したRef.116600は希少性から価格が高騰している
- コンビモデルはステンレスモデルとは違うラグジュアリーな魅力を持つ
- 多くの著名人や芸能人にもその独自の価値が認められ愛用されている
- シードゥエラーは他人と被りにくい「通好み」の選択肢と言える
- 以上のことからシードゥエラーは一般的な人気指標だけでは測れない深い魅力と価値を持つ時計である
ロレックスの腕時計についてもっと知りたい方はこちらの記事もどうぞ!